FP1級おじさんの日記

税理士を目指すFPおじさんの奮闘記

相続税対策否認リスク(東京地裁判決)②

相続税法実務編

こんにちは。FPおじさんです。(^^♪

 

前回につづき、相続税対策否認リスクをみていきます。今回は、納税者が行った相続税申告に対する税務署(国)側の更正処分と東京地裁の判決について解説していきます。

 

〈税務署(国)の更正処分〉

  • 財産評価通達第6項(この通達の定めにより難い場合の評価)適用
  • 評価通達で評価することが著しく不適当と認められる財産と認定
  • 国税庁長官指示で不動産鑑定評価を実施し更正処分
  • A土地の適正評価額 ⇒ 7億5千万円
  • B土地は適正評価額 ⇒ 5億2千万円
  • 国税不服審判所もこれを支持
     

東京地裁判決の要旨〉

  • 租税負担の実質的な公平を著しく害することが明らかな特別の事情が有る場合は、評価通達以外の合理的な方法で評価することが認められる。
  • 各不動産の評価額と売買価額や鑑定評価額の間に4倍近い乖離がある。
  • 被相続人は物件取得時に既に90歳を超えていたにも拘らず、多額の銀行借入を元に賃貸不動産を取得。銀行稟議書にも相続税対策である旨が記載されている。
  • 被相続人には6億円を超える相続財産があったが、新たに取得した賃貸不動産を評価通達通りに評価することで、相続税負担を逃れることを企画し実行したと認められる。
  • 本件賃貸不動産は、収益還元法に基づく鑑定評価額が適正である。

 

上記より、本件は賃貸不動産の取得自体を否認しているのではなく、相続開始直前における不動産の取得状況が相続税を回避する目的で行われたことを問題視していると考えられます。

 

今後は、日本の人口減少に伴い賃貸不動産経営は難しい局面を迎えます。多額の借入金による賃貸不動産取得は、家賃回収不能リスクにより借入金返済不能に陥る可能性もあります。(バブル崩壊後の状況を思い出してください。)

 

FP おじさんとしては、上記リスクに加えて賃貸不動産の遺産分割リスク(共有取得)を考えると流動資産(現金預金など)の比率を高める方が良いと考えています。

 

確かに日本の相続税贈与税は非常に高いのも事実です。しかし、合法的な節税が常識の範囲を超えてしまうと脱税になってしまいますので注意してください。

 

出典:松浦章彦税理士事務所ホームページ

http://office-m2.jp/souda/succession/1562.html

 

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